近頃、シンガーソングライター カネコアヤノさんの曲をよく聴いています。
彼女の音楽は、歌い方や雰囲気が、どこか ”文学っぽい"んですよね。
歌詞も、すごく詩的であったり、誰かの日記のようだったり、ついつい聴き入ってしまいます。
(ブログを書くこと、人のブログを読むことの好きなひとは特にハマるかも…)
今回は、カネコアヤノさんのおすすめ曲を3ご紹介したいと思います。
光の方へ
曲のタイトルからして、
あ、たぶん希望に満ちたすっごい前向きな歌なんだろうなー、と思っていましたが、実際聴いてみると、いい意味で期待を裏切られます。
隙間からこぼれ落ちないようにするのは苦しいね
だから光の方 光の方へ
壊れそうだよな僕ら …
だから光の方 光の方へ (歌詞一部引用)
曲名の通り、「光の方へ」という歌詞が、曲の中で何度も繰り返されます。
がんばって光の方を向く。
「苦しい」から。「壊れそう」だから。
「隙間からこぼれ落ちないように」なんとか踏ん張って前を向きつづけなくては、という歌詞が、今のこの大変な時代にすごく合っているなあと思います。
加えて、カネコアヤノさんのすごく力強い歌い方が、まっすぐに刺さります。
元気のないときに明るい音楽を聴くのは、さらに落ち込む可能性大なのであまりおすすめはしませんが、この曲は例外だと思います。
また、「視界で揺れる髪の毛先が好き」とか、「靴のかかと踏んで歩くことが好き」とか、そういう、本当に他愛無い日常のことが歌詞に盛り込まれているところが、個人的にはものすごく好み。
私小説や純文学好きな人なら、こういう部分もハマるかもしれませんね。
さよーならあなた
「さよーならあなた」は、彼女の1st EPの表題曲。
Youtubeに公開されているミュージックビデオでは、カネコアヤノさん本人が喫茶店の店員の役で出演されています。
(このお店、実際に彼女本人のバイト先だったそうです!)
ストーリー性のあるミュージックビデオにも注目です。
この曲はとにかくラストの1フレーズ、
ああ、
あなたに花の名前の一つでも
あげること できたらいいのにな (引用)
この部分が特に好きで好きでしかたない。
ラブソングにありがちな「好き」「愛してる」「I love you」
そういう言葉は一度たりとも出てこないのに。
「花の名前のひとつでも あげたい」
このラストが、びっくりするほど、胸に刺さる。
子どもの頃の「誰かを好きになる」感覚は、たぶん、こんな感じですよね。
たとえば幼稚園生くらいの、まだ、男も女もないくらいの年齢のころ。
その感覚をあざやかに思い出させてくれる希少な楽曲だなあと思います。
やさしい生活
2017年、アルバム「群れたち」収録曲。
「群れたち」は、当初は500枚限定発売の予定でしたが、予約が殺到したため追加生産が決定したそう。
「やさしい生活」のMVは、カネコアヤノさんが田舎の一軒家でひとり生活する様子を撮影した素朴なものですが、彼女の楽曲の雰囲気によく合った、やさしい魅力に満ちているなあと思います。
私的カネコアヤノNo.1は間違いなくこの曲です!
もう もうすこし だいじょうぶに なったらなったら
大きな猫が飼いたい
もう さらにすこし だいじょうぶになったら
小さな犬も飼いたい (歌詞引用)
この曲は、こんなふうに始まります。
「もうすこし だいじょうぶになったら」。
曲中で何度も何度も繰り返されるこのフレーズに、しずかな切実さみたいなものを強く感じます。
ミュージックビデオの映像、曲名の通り、ひとりきりの静かで”やさしい生活”の様子も相まって、びっくりするくらい、引き込まれる。
もうすこし だいじょうぶになったら
次の日 雨でも落ち込まなくなるかな
綺麗な靴に 照れたりしないのかな …
もうすこしだけ だいじょうぶになったらいいとは
まいにちまいにち 思っているんだ
(歌詞引用)
ひとりの人の精神の回復の様子って、たぶん、こんな感じですよね。
傍から見れば、ただふつうに過ごしているように見えるけれど、
本人の中では、毎日激しい葛藤と、逡巡がある。
小さな回復の波があって、その反動で、また小さな落ち込みがあって…
そういう経験がある人には、ものすごく刺さる一曲だと思います。
いかがだったでしょうか?
カネコアヤノさんの楽曲には、他にも独特の魅力に満ちたものがたくさんあります。
皆さまもぜひ、一度聴いてみてくださいね。
それでは、今日はこのへんで。
またお会いできますように。