数あるさくらももこ作品のうちでも、「さくらももこ最大の問題作」だと話題の本作。
「お金のあるオトナが本気でふざけてる」感を楽しめます。
『焼きそばうえだ』かんたんあらすじ
「植田さん、会社を辞めて、
バリでヤキソバ屋でも開いたほうが幸せかもね」 の一言からすべては始まった。 さくらさんを始めとする「
男子の会」のメンバーは動揺する植田さんを伴い、 ホントにバリへ!
焼きそばの研究や、物件交渉、
睡眠不足での看板作りなど思ってもみなかった数々の難題に立ち向 かう! 現地での奇跡の出会いもあり、事態は好転するかにも思えたが──
。ジョーダンみたいな本当の話。
(※Google Booksより引用)
評判が悪いのはなぜ?
上記あらすじをさらっと読んで、「ん?植田サンって誰だ…?」と、いきなり置いてけぼりを食う方も多いんじゃないかと思います。
植田さんとは、さくらももこさんのご友人。(TBSの社員さんだそうです。つまりは一般の方)
さくらももこさんが植田さん含む数名の友人とともに結成した「男子の会」が、「ツイてない植田さんを幸せにする」ために、はるばるバリまで出向いて焼きそば屋さんを立ち上げる…というだけの一作。
一見ほのぼのした内容にも思えますが、一部でやたら評判が悪いのは、植田さんの人格や境遇、人生など諸々について遠慮なくくさしていく、容赦のない作風のためかもしれません。
個人的には、著者さくらももこさんと植田さんのあいだには、長年の付き合いによる確固たる関係性がすでに出来上がっているはずですし、そこを外野があれこれ言うのも違うんじゃないかと思うので、
批判的なレビューにはイマイチ共感できないというのが正直なところですね。
何より、読み物としてふつうに楽しめる。
それで十分だと思います。
ブラックユーモア…というほど尖った内容だとは思わないけれども、
基本的にほのぼの系、爆笑ものエッセイで知られるさくらももこさんの作品にしては、本作はやっぱりちょっと「ブラック風味」ではあるのかもしれない。
ですが、個人的にはさくらももこ作品の中では一番好きです!
なぜだろう…
たぶん、大の大人が本気出して自由奔放にふざけて楽しんでいるのに、リアリティが失われず、ちゃんと「現実」がそこにあるのが”イイ”んだと思う。
もちろん、さくらももこさん独特の、あの笑える文章展開ありきですけどね。
「焼きそば店でも開店しちゃうか!バリにでも!」
そんなちょっとした話のはずみから、本当にバリまで行って物件の交渉までして、お店オープンして…いやすごいよ。
(ちなみに当のお店はとっくに閉店したとの情報がネットにありましたが…笑)
批判的なレビューの中には「上から目線で友達を小ばかにし、笑いものにしている」みたいな指摘もありましたが、絶対それは的外れだと思います。ちゃんと行間読めばわかると思うんだけどな…
あとは単純に「内輪ネタすぎて面白くない」との意見もあるようですが、それ言うなら、日常ものエッセイはたいてい内輪の話なのでは…?と思います。
本作に限らずですが、さくらももこさんの作品は例外なく「人間のダメな部分、どうしようもない部分、うじうじした感傷」みたいなところを包み隠さず精彩に描いていて、そこが最大の魅力だなんだよなあと思っています。
(そこまで言っちゃって(書いちゃって)いいの?!みたいな部分も結構あるよね。)
笑いあり。涙あり。感動あり。
この名作要素三銃士を取りこぼさず余すところなく表現するのは、実はなかなか難しい。
『焼きそばうえだ』は、酸いも甘いも知った大人が十二分に楽しめる要素がふんだんに盛り込まれた良エッセイだと思います。
あと、ところどころの行間に感じられるバリの自由な空気感が、何気にものすごく楽しい。
皆さまもぜひ、読んでみてくださいね♪
それでは、今日はこのへんで。