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【ドラマ】松本清張サスペンス『聞かなかった場所』(主演・名取裕子)感想 原作との大きな違いとは?

これ、めちゃくちゃ面白かったです!

名取裕子さん主演のドラマ版は、原作とはだいぶ内容が違いますが、それぞれ違う楽しみ方ができるのでなかなかに良い改変だったと言えるんじゃないでしょうか。

 

頭が良いから、立ち回りが上手いから、地位や名誉があるからといって幸せになれるとは限らないとか言いますが、まさにそれを体現した作品なんじゃないかなと思います。

 

 

 

 

松本清張原作『聞かなかった場所』かんたんあらすじ

農水省係長の浅井恒雄は、神戸への出張中、妻の英子が心筋梗塞で急死したことを知る。妻は代々木の坂道近くにある化粧品店に入ってきて、そのままこと切れたという。

 

日頃から心筋梗塞を注意していたはずの妻が、なぜ負担のかかる坂道を上ろうとしたのか。そもそも妻はなぜ代々木にいたのか。浅井の聞かなかった場所であった。

 

現場の近くに連れ込み旅館が林立しているのに気づいた浅井は、ある想像をめぐらし、調査を始める。

探索の末、「真相」を掴んだと思った浅井は、ある行動に出るが……。

引用元:Wikipedia

 

上記あらすじを見るかぎり、まさにザ・ミステリーという感じですよね。

社会的立場のある、そしてとても頭のキレる夫が、妻の死因にまつわる不審の念をどうしてもぬぐいきれない。
自分ひとりで解消しようとして、ずぶずぶ沼にはまっていく…

いかにも社会派推理小説の金字塔といわれる作品を多く生み出してきた松本清張らしい作りこみ方、ストーリー展開だと思います。

 

 

『聞かなかった場所』ドラマ版(主演・名取裕子

名取裕子さん主演のドラマ版では、原作とは違い、厚生福祉省・女性子育て支援局次長の浅井恒子(名取裕子)が主人公。
それに合わせて細かな設定があれこれ変えられています。



ストーリーの流れ自体は原作と同じですが、主人公を男性→女性にという大胆な改変にびっくり。
この大幅な改変により原作の良さが少しも失われていないところがすばらしい。


…なんでしょう、やっぱり「女性の恨みつらみ嫉み」要素は、ストーリー展開をよりドラマチックに仕立てる必要のある映像作品にはうってつけなのでしょうか。『リング』の貞子さん然り、『地獄少女』然り…

 

 

ドラマ『聞かなかった場所』感想・高すぎるプライドは人を不幸にする

名取裕子さん演じる主人公・恒子は、とにかくプライドが高すぎる。
高すぎるプライドは人を決して幸せにはしないものだとつくづく実感しました。


まぁ恒子の場合、とにかく許せなかったんだろうなあ。
頭が良くて仕事もできて、すべて順風満帆で「完璧な」自分が負けるのは、誰が相手であろうと我慢できない。
まして、内心でちょっと見下していた夫と、元部下の女に「笑われて」いたともなると、そりゃーもうなんとか「見返して」やらないと気が済まないわけですよね。


「プライド」には自分を律するためのものと、他人より秀でていたい・他者より上に立ちたいというものの2種類があるんじゃないかと思いますが、恒子の場合、後者のそれがびっくりするくらい強かったのでしょう。
だからこそ社会的には十分成功できたわけですけども。


これ、なんでわざわざ主人公の性別を変えるなんて面倒な改変をしたんだろう?と途中までは疑問でしたが、ストーリーが佳境に入ると「あぁ!これは主人公女性のほうが絶対説得力あるわ~」と納得。

元部下の愛人宅をつきとめて、追い詰めて…っていう執念というか情念の描写が、なんともリアルなんですよね。
これは男性にやらせるより女性のほうが、リアリティ・迫力の面では圧倒的に効果的かと。


「女はネチネチしている」「男と違っていつまでも根に持つ」なんていう認識は、単なるジェンダーバイアスにすぎない。大体そんなのは生まれ持った性質なのだし、男女のあいだに有意な差なんてあるわけない…などと個人的には思っていたのですが、これ、脳科学的にはわりと「事実」に近いらしいですね。

 

昨今はわりと知られてきていることですが、男性と女性の脳ではそれぞれ、感情を処理する部位というのが違います。

男性の場合、脳内の偏桃体という場所で感情処理がなされ、これはそのまま短期記憶になってしまうので、わりかしすぐに忘れてしまう。
しかし女性は、感情を大脳皮質でキャッチし、言語化し、長期記憶として脳内にとどめておくそう。

 

自分がされたことを何でもかんでもあっさり許してやれっていうのはさすがに違うけれども、「忘れる」というのもやっぱりひとつの防御なんじゃないかな、とまぁ架空の話なんですがしみじみ思ったり(笑)

 

恒子も、一般的にはかなり「理性的な」女性だったんだろうと思うんですよ。
そうでなければ、あれだけの男社会で局長にのしあがるなんて無理だっただろうし…

しかし、やっぱり夫のこととなると冷静ではいられないんですね。勢いで殺人を犯してしまうくらいには。

 


恒子の転落っぷりがなんとも身につまされるストーリー展開でした。
女性脳、おそろしい…

 

 

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それでは、今日はこのへんで。