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【感想】『シャーロックホームズの冒険』短編小説「ボヘミアの醜聞」「赤毛組合」「花婿失踪事件」



今回は、シャーロックホームズシリーズの短編集『シャーロックホームズの冒険』収録作品のうち3編の感想をまとめました。

 

 

 

ボヘミアの醜聞

これは、当シリーズではめずらしく、ホームズが「してやられる」回であり、そして、かのアイリーン・アドラー嬢との出逢いの回でもあります。

アイリーン・アドラーというのは、まさしく「ホームズを打ち負かした」とんでもない女性です。

 

事件の概要

ホームズはかのボヘミア王から、とある依頼を引き受ける。
「あの女(アイリーンアドラー)と自分とのツーショットの写真を、なんとか君の手腕で取り戻してくれ…」

王は近々結婚することになっている。
そして、アイリーンアドラーは、その写真を相手方に送ると脅している。
肝の座った男の心を持つ彼女ならば、やりかねない。

その写真の存在がもし公にでもなれば、結婚の話が壊れるだろう。
王としての立場も、危うくなるーー。

ホームズは最高の策略をもって臨むが、アイリーンアドラーの機転と度胸の前に、その計略ははかなくも敗れ去る。
写真は、戻ってはこなかったーー。

 

ボヘミアの醜聞 一部引用

シャーロックホームズにとって、彼女はいつも「あの女」である。
…彼は、アイリーンアドラーに愛のような激情はいっさい感じていなかった。
私の知る限り、彼はこれまで見たこともない、完璧な思考力と観察力をかねそなえた最高の機械だ。
彼が愛を語るときは、決まって嘲笑的な批判がなされる。

 

まとめ

上記の通り、ホームズという人物は、相棒のワトソン医師からみても、「愛」という言葉、感情、概念といったものからことごとく遠い人間です。

にも関わらず、この一件からどれだけ時がたっても、ホームズのなかからアイリーンアドラーというひとりの女性の存在が消えうせることはありません。
この件をきっかけに王から譲り受けた彼女の写真をたいせつに保管し、「あの女」と呼び、その後もたびたび、話題にする。

ワトソンも、それから私たち読者も、「ホームズは愛情など求めておらず、必要ともしていない」と思いがちですが、
そんな彼にも「特定の人物に対する執着」は、たしかにあります。
「あの女」--アイリーンアドラーに対しても、それからむろん、相棒たるワトソンに対しても。

あまりにも少数の人物に集中しているぶん、その執着は、かえって一般的な人のそれよりも、強いのではないかと思われます。

この事件では、ホームズのそういった「人間じみた」性質がちょっと垣間見える感じもあって、ファンとしてはすごく印象深い回ですね。

あと、アイリーンがかっこよすぎる。これは惚れるよ。。

 

赤毛組合

事件の概要からしてもタイトルからしても、ちょっと「世にも奇妙な物語」っぽいなあと、個人的には思っています。

こんなことあるんですねー!(いや、フィクションではあるけども)

 

事件の概要

ホームズは、燃え立つように赤い髪を持つ依頼人から、奇妙な事件の依頼を受ける。

「良い仕事の口がある。ブリタニカ大百科事典を書き写すだけのきわめてかんたんな業務だが、報酬は破格だ。
ただ、業務時間中、あなたはずっと、建物内にいなくてはならない。用事でも、病気でも、それ以外のどんな理由も通用しないーー。」

あきらかに、何かがおかしい。
自分には金が必要なので引き受けはしたが、どうしても、違和感がぬぐえない。
ホームズさん、この件を調べてはもらえませんかーー?

 

結末

結論から言うと、「赤毛組合」たるおそろしい組織は、かの赤毛依頼人の住居を、一日数時間のあいだ、人っ子ひとりいない状態にしたかった。

なぜなら彼らは、銀行強盗の一味だったから。
依頼人の住居の地下から、隣接した銀行の建物に向けて、襲撃のための地下道を掘っていたのだーー。

まとめ

これはほんとうに、奇妙な手口ですよね。
なんか、もっと他のやり方なかったの?とも思うけど(笑)、でも、じゃあ他にどんな気の利いたやり方があるかと問われると、困ってしまう。

ホームズ「一般に、世にも奇妙な出来事は、分かってみると大して神秘的でもない。ふつうは、特徴のない犯罪ほど厄介なものだ」

…ほんとうですね。ホームズさん。

たぶんこれは、私たちの日常にも言えること。

何気ない会話のなかに、その人の何よりの本音が何食わぬ顔して混ざっているかもしれない。逆に、ものすごく意味ありげな言葉にだって、実のところは大した意味がなかったりもする。

ホームズ作品を、こういった抽象的、心理的、あるいは感傷的な読み方をするのは、シャーロキアンとしてはもしかしたら、ちょっと型破りだったりするのかもしれない。

ミステリーは、事件の不思議さ、謎解きの鮮やかさに胸ときめかせるだけで、本来、十分なハズだから。

でも、ホームズシリーズって、確実にそれ以上の何かがあると思うんですよね。
ミステリーとして、心情描写がさほど細かいわけではないと思うのに、人間のふしぎさ、汚さ、こずるさ、そういうものが、いかにも自然に描かれている。

この「赤毛組合」は、まさしくそういった「事件そのもの」以上の要素が楽しめる掌編ではないかと、個人的には思いますね。


 

 

花婿失踪事件

事件のタイトルからは一見、おや、駆け落ち的なロマンス展開か…?と思いきや…。

いや、むしろ真逆でしたね!

この事件では誰も命を落としてはいないし、それどころか、犯人を公的に罪に問うことすらできませんが…
個人的にはもっとも頭にくる事件です。(ちょっと女性を馬鹿にしすぎ、という点で。)

まさかこんな時代からロマンス詐欺があったとは…。

(いや、こんなことある?と突っ込みたくなる部分もなかなか多いが)

 

事件の概要

結婚式の朝、教会に向かう馬車のなかから忽然と消えうせた新郎。

彼の妻になるはずだった女性は、彼の身にいったい何が起きたのかと、心配でたまらない。
だが、彼のことを疑ったり、自分が何か恥ずかしい扱いをされた、などとは、露ほども思ってはいない。
なぜなら、結婚するにあたって彼にお金を貸したり、持参金を預けたり、そういったことは一切していないのだからーー。
彼が姿を消したのには、何か、やむにやまれぬ事情があったに違いないのだ。

ホームズさん、この件を調べてはいただけませんかーー?

 

結末

結論から言うと、「花婿」の正体は、依頼人の女性の「継父」にあたる男であった。

娘には、叔父が遺してくれた遺産、そして自分自身の収入がある。
娘と同居している継父は立場上、その金を使って生活する権利がある。
だが、娘が結婚して家を出てしまえば、その金を使うことができなくなるーー。

焦った彼は、考えた末、愚かな試みを実行に移した。

変装して、舞踏会で出逢った彼女を、自分に夢中にさせる。
プロポーズし、永遠の愛を誓わせる。
そのうえで、結婚当日の土壇場で、行方をくらませる。

実のところ、この継父と依頼人の女性はふつうに同居しているのだけれど、女性のほうがかなりの近視で、なお、変装した彼と会うのは決まって、日が落ちて視界が悪くなってからだったので、この無慈悲なる試みは成功してしまった。

まとめ

コロナ渦に問題になった「ロマンス詐欺」も許せませんが、この事件の場合、犯人が身内の人間であった、という点が、いちばんおそろしいですね。

一般に、殺人事件の半数以上は「親族間」であるといいます。
近い人間であればあるほど、恨みつらみ、利害、遺恨、そういったものをどうしても、水に流せなくなってしまうといったところでしょうか。

しかしホームズは、この件の真相を、依頼人の女性に告げませんでした。

ホームズ「彼女に言っても信じないだろう。
虎子を得ようとする者に危険あり。女から思い込みを奪おうとする者も同じ危険あり。

いや、教えてあげてよ…。
それにしても、いくら近視とはいえ、同居している家族に気づかないかねえ。

どうにもすっきりはしない終わり方でしたが、唯一、例の継父に対するホームズのキレっぷりは素晴らしかった。

この話も、事件そのものより、そこに渦巻く人の思いというものがとても重く、深く、いろんな視点から興味深く読めましたね。

 

おわりに

 

ホームズシリーズには他にも、

短編ーー「シャーロックホームズの回想」、「シャーロックホームズの帰還」、「シャーロックホームズ最後の挨拶」、「シャーロックホームズの事件簿」 の4冊

長編ーー「緋色の研究」、「四つの署名」、「バスカヴィル家の犬」、「恐怖の谷」 の4冊

の計9冊があります。

 

皆さまもぜひ読んでみてくださいね。

 

 

 

 

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それでは、今日はこのへんで。