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【映画】『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』ネタバレ感想と考察 ーわしは雷に7回打たれた

名作だと知っていましたが、つい先日までなんとなく観るのを先延ばしにしていました。案の定もっと早く観るべき作品だったなあと後悔の嵐。

というわけで今回は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』劇中にて気になった部分を自分なりに掘り下げていきます。

 

 

 

 

 

 

ベンジャミン・バトン 数奇な人生」あらすじ

80歳の状態で生まれ、年を取るごとに若返る人生を与えられた男の一生を描く。 2005年、ハリケーンが接近中のニューオーリンズ。 病院で死の床に伏している老女デイジーは、娘キャロラインに、ある日記帳を自分に読み聞かせるよう求める。 その日記帳にはベンジャミン・バトンという男の人生が綴られていた。

引用元:Wikipedia

 

実話なのか?

老体で生まれ、年を経るごとに若返っていく。まさしく数奇な運命のもと生まれた主人公ですが、実際にはこのような病気はありません。

似たような病気に「早老症」という、老化が人より早い症状がありますが、ベンジャミンバトンのように「若返っていく」というケースは現実にはないようですね。

 

通常はこういった特殊な身体事情を抱えた人物が主人公であれば、その部分にひたすら焦点をあてたお涙頂戴もの的な魅せ方をする作品も多いのではないかと思います。しかしこの映画はいわゆる医療ものではなく、したがって主人公ベンジャミンが専門医にかかったりするようなシーンは一切ありません。


日に日に若返っていく体を活かし、船乗りとして働いたり、その中で戦争を経験したりとまさに「数奇な人生」を送ったベンジャミンですが、彼の人生を通してさまざまな人の生き方を垣間見ることができるのが、この映画の面白さの理由なのではないでしょうか。

 

当作はベンジャミン一人の人生を描いたストーリーというよりは、ある意味では群像劇といったほうがふさわしいのかもしれません。

というわけで、ここからは劇中にて個人的に気になった人物について個人的に思ったことを書いていきます。

 

ミスター・ガトー氏

まず気になったのは、映画の導入部のみに登場する人物、ミスター・ガトー氏。
彼は生まれつき目が見えない男性で、時計職人を生業としています。奥さんと息子と仲良く暮らしていましたが、やがて息子は戦争で命を落としました。

 

哀しみの中で「駅前の時計を作り上げる」という仕事を黙々とこなすガトー氏。そしてついに、針が逆向きに動く時計を作り上げたのです。

こうすれば戦火の中で命を落とした若者たちも蘇るでしょうと言う彼には、誰も何も言えず…
最後の仕事をやり遂げたのち、ガトー氏は姿を消しました。

 

もちろん実際に時間が戻るわけではなく、一度死んでしまった人が戻ってくることも決してありません。
けれど彼の強い念は、何かの形で天に通じたのではないか。それが「老人で生まれ、徐々に若返っていく」体に生まれついたベンジャミンの存在となったのではないだろうか。

ついこんな非科学的な考えを抱いてしまうくらいには、序盤にほんのわずかしか登場しないガトー氏には存在感があり、荘厳な雰囲気がありました。

 

本編と直接的に関係のない人物が一瞬だけ、寓話的にふわっと出てくる、ああいった演出は例えばフランス映画などでよく見ますが、アメリカ映画だと珍しい気もします。個人的にすごく好きな魅せ方でしたね。

 

作中に何度も登場する「雷」の意味とは?

ーー話したかな?わしは雷に7回打たれた。

作中にていくぶん唐突に登場し、繰り返しこう語る老人が印象に残っている人も多いはず。
雷に7回打たれた」。映像とともに何度も何度も強調するように語られるこの台詞は、一体何を示唆しているのでしょうか。

 

ロイ・クリーヴランドサリヴァン

「雷に7回打たれた」と聞いてまず思い浮かぶのは、アメリカのバージニア州で生きたとある男性の存在です。その名はロイ・クリーヴランドサリヴァン

 

彼は実際に7回、別々の場所で雷に打たれたが生きながらえたという有名な人物で、存命中は「人間避雷針」という愛称をつけられていた、と言われています。

ちなみに彼は71歳で自死していますが、その理由は「片思いの恋で取り乱していた」というものらしいですね。(雷関係ないのね…)

 

もちろんこの男性の存在が本作に関係しているとは断言できませんが、7回も雷に打たれながら生きていた人がかつて現実に存在したというのもまた事実。
たとえ思いがけないことが起こっても、どんな衝撃を受けても、人生は続いていくーー


人生は先が読めない」。

ベンジャミンを実の母のように育てたクイニーがよく口にしていた言葉ですが、この雷のくだりもそのことを暗に示しているのかもしれませんね。

 

エリザベス・アボットという女性

脇役でありながら何気にものすごく存在感のあったこの女性。人妻で夫はスパイ。

ロシア時代のベンジャミンの恋人であり、ベンジャミンいわく「美人ではない」ということですが、個人的にはものすごく雰囲気があって好きなのです、彼女。

 

彼女自身がベンジャミンに惹かれたのはどのタイミングだったのでしょう。深夜に二人でお茶をしている時間が一番幸福そうで、とてもリラックスしているように見えました。おそらく夫とはそういう時間を持つこともほとんどなかったのではないでしょうか。

 

全てが何かにつながっている

劇中では終始「タイミング」というものの重要性を強調するような描き方、魅せ方が徹底されています。
たとえばデイジーが足をケガする際の描写などがその典型ですが、エリザベスとベンジャミンの出会いも実はその一つなのではないかと思うんですよね。


出会うタイミングがちょっとずれていたら、ベンジャミンと彼女がああした形で関係を持つこともなかったのでしょう。そしてもしかしたら彼女のほうも、ベンジャミンと出会っていなければ歳を重ねて再び海峡を泳いで渡るチャレンジなんてしなかったのではないかと個人的には思うのです。

 

劇中には本当に無益な出会いや無駄なシーンというものが一切なく、全てのシーンがどこかでつながっているように思えるのがすばらしかった。時間をおいてまた観たいなと思います。

 

 

 

 

 

それでは今日はこのへんで。