※ネタバレ含むふわっとした考察記事です。
今回は最新話までの展開に思うことを、ふわっとまとめてみました。
大事なのはレンアイじゃない
まずはじめに押さえておきたいのは、「暁のヨナ」は少女漫画のカテゴリーでありながら、少女漫画という存在の大義名分である「恋愛」の部分に重きをおいていない希少な作品である、という点です。
もちろんストーリーが進んでいくうえでは、ヒロインヨナ姫と、従者ハクのあいだに芽生える思慕の念、そしてそれがたしかな愛情に変わってゆく過程というものが、とてもていねいに描かれています。
しかしながら、それはあくまで表面上のストーリーを進めるうえでの一つのコンテンツにすぎません。
なぜなら、そもそもがヨナ姫とハク、彼ら当事者にとってさえわりと早い段階で「恋愛」はすでに生きていくうえでの最重要事項ではなくなってしまっているからです。生きるうえでの最重要事項がレンアイってなんだよという感じですが、少なくとも少女漫画界隈においてはそういう作品、ざらにありますしね。
ではかれらにとっての最重要事項とは、はたして何なのか。
それはもちろん、他ならぬ高華国の現王であり、ヨナ姫とハクの幼なじみでもある因縁の相手でもあるスウォンの存在です。
罪と罰、悔恨と赦し
あくまで個人の感想ですが、私はわりと初期の段階、だいたいヨナ姫の正体が緋龍の生まれ変わりであることが明らかになってきたあたりから、この作品の根幹には、「罪」「罰」「悔恨」「赦し」といった重めの概念が、草凪先生の職人的手腕によって丁寧かつ慎重に、さりげなくあちこちにちりばめられているのではないかと思っていました。
なにしろ、メインの登場人物たちは皆、物語が始まったばかりの段階で多かれ少なかれ「罪」を背負っています。
それぞれが背負う罪
◎ヨナ姫
・一国の姫でありながら、苦しい暮らしをしている民のこと、王国の現状に目を向けることなく、ただただ、たのしく優雅に暮らしていた。
・緋龍の生まれ変わりであり、四龍をまとめ導く立場にありながら、
異形の存在としてさげすまれて生きている四龍の存在を知らなかった。
もちろん、上記の罪(と言っていいのか…)は必ずしもヨナ姫自身が背負わなければならないものではありません。
そもそも、彼女はただ「そう育てられた」だけなわけですし、彼女本人の人格とか思想とか生き方とかそういった部分に何らの問題があるわけではない。
弱冠16歳の姫君に上記のような責任を負わせるのは酷なのかもしれませんが、
それでもストーリー全体を大きな目で見れば、「知らない」ということはやはり、ひとつの「罪」といっていいのではないかと思うのです。
◎スウォン
・言わずもがな、ヨナの父親である前王イルを弑逆したこと。
・幼なじみであり何の非もないヨナとハクの立場と未来を奪った。
◎イル王
・一国の王でありながら、苦しい暮らしをしている民を顧みることがなかった。
「為政者」にふさわしい器ではなかった。
・スウォンの父ユホンを弑逆。
・娘ヨナが「緋龍の生まれ変わり」であると知りながら、彼女に城の外の世界、王国の内情を教えることなく蝶よ花よと育てた。
◎ユホン
・神官たちを虐殺。
・ヨナ母カシを暗殺。
・戦での非人道的ふるまい。
◎ジュド、ケイシュク、その他部族長
・スウォンの謀反に加担、あるいは見て見ぬふりをした。(「国のため」はわかるが他にやり方なかった?)
他にも細かい部分に目を向ければ、さまざまな「罪」が当作品にはあふれています。
そんななかで唯一、100パーセント何の罪もない人間が一人存在するんですよね。それはメインヒーローたる人気キャラ、ハクの存在です。
罪の概念あふれるこの作品においてハクの存在がどれだけ大きいか、そして一つの物語としても、そういう人物が中心にひとりいることがどれほど意味のあることか。そういう意味では、ハクはヒロインヨナ以上の、また四龍たち以上のキーパーソンといっても過言ではないのではないでしょうか。
224話ラスト、スウォンどうする!?
「暁のヨナ」はある視点からみれば、現王スウォンの償いの物語、ということもできるのではないかと私は思っています。
「棄てられない」ーー。ヨナとハク、かれらの存在の大きさと重要性をようやく自身のなかで認められたものの、スウォンはまだそのことを実際の行動、言動でしめすことはしていません。「しなかった」のか、あるいは「できなかった」のか、どちらかはいまだはっきり描かれていませんが。
最新224話ラストにおいて「ああやっと! 戦のほうはやっとひと段落ついたけど、やっっっと、ここからが「本題」だなあ! スウォンにとっては!!!」と思いつつ、個人的にはものすごくワクワクさせられております。だってもう「向き合う」以外の選択肢が残されていませんからね。スウォンには。
次話も楽しみに待ちたいと思います。
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