2023年10月公開の岩井俊二監督の新作『キリエのうた』が、今から楽しみで仕方ない。
主演は独特のハスキーボイスが話題のアイナ・ジ・エンド。俳優ではなくアイドルであり歌手である彼女が選ばれた理由は、やはりあの独特の声色と歌唱力なのでしょう。
『キリエのうた』はどんなストーリー?
キャストのビジュアルなどについては特報が続々と公開されつつありますが、現時点ではまだストーリーに関する詳細は明らかになっていません。
ですが公式Twitterなどにて、撮影の情報などは少しずつ見せてくれていますね。
とりあえずはタイトル通り、「歌」にスポットを当てたストーリーであることは間違いなさそうです。
主演がアイナ・ジ・エンドであることについて
岩井俊二監督作品でメインキャラクターが歌手…といえばやはり『スワロウテイル』のCharaが頭をよぎります。
彼女もアイナと同じく独特のハスキーボイスが特徴ですよね。まあCharaはウイスパーボイス、アイナはパワーボイスといった違いこそあるけれども、歌声の響き自体はとてもよく似ている気がします。
となると、やはり今回も『スワロウテイル』テイストの作品になるんだろうか。もちろん舞台も演者もまるで違うという前提はあれど、岩井俊二作品にはやっぱり唯一無二の雰囲気がありますよね。
それが猛烈に好きな人もいる一方で、あまり肌に合わないという人がいるのも正直よくわかる。良くも悪くもちょっと特殊な世界観であることは間違いないと思うので。
ちなみに私は「猛烈に好きな人」の一人であり、中でも賛否両論の激しい『リリイシュシュのすべて』が一番好きだったりします。暗いけど綺麗で切なくて、あの世界観にはなんともいえない中毒性があるんですよね。
そして今回主演をつとめるアイナ・ジ・エンドの楽曲も声も、実はめちゃくちゃ好みなのです。とはいえBISHの活動にはあまり詳しくないので、あくまでソロアーティストとしての彼女が好きだというのが正直なところ。なかでも一番好きなソロ曲『ペチカの夜』は、眠れない夜に何度聴いたかわからない。
『ペチカの夜』はアイナ自身が作詞作曲をしていて、歌詞も歌い方も全てが一つの疑似的な絶望みたいなものを完璧に構築していて、疲労が溜まっているときに聴くと本当にぐさぐさ刺さる。中でも「お医者に行かなくたっていいよ」というワンフレーズがなぜかピンポイントで好きで、そこだけリピートで聴いたりすることもあるくらい。
いいですよね、あの繊細さと攻撃性が見事に同居しているような何とも言えない感じ。『キリエのうた』でも、アイナ・ジ・エンドのそうした一面が見られたら嬉しい。路上で歌うシーンなどもあるようなのでいっそう期待が高まります。
岩井俊二の作り出す世界観はずっと過渡期なのではないだろうか
岩井俊二監督作品を語るとき、人によっては「あの作品は良かったけどあれはダメだ」とか「もう全盛期は終わったよね」みたいな表現をすることがあります。
岩井俊二作品そのものに視聴者層により好みが分かれやすいという特性があるのか、あるいはファンにこだわりが強い人が多いのか。
まあ感じ方は人それぞれだというのは否定しませんが、私は、岩井俊二監督が作り出すあの世界観は、良い意味でずっと過渡期なのじゃないかと思うのです。あの不安定ゆえに魅力的な状態が安定して続いているというのでしょうか。
だからこそとことん魅せられてしまうし、新作の情報を見聞きするたび本当にわくわくさせられるんですよね。
『キリエのうた』今後の続報を楽しみに待とうと思います。
〇『キリエのうた』原作小説
〇岩井俊二作品について