今回は、ドラマ『高校教師』(真田広之さんと桜井幸子さんver)の第2話「嘆きの天使」に関する個人の所感を書いています。
あらすじの文章化等はほとんどしていませんが、ネタバレ要素はありますのでご注意を。
対照的に描かれている二宮繭と相沢直子
親友であるこの二人に共通しているのはともに「憧れの先生」がいるということ、さらには、あらゆる手段を使ってアプローチを続ける積極性があるというところでしょうか。いわゆる肉食系というやつですね。
しかし早くも第2話にして、この二人の歩む道には明確なる岐路が訪れます。
なんだかんだで家に入れてもらえて心配までしてもらえる繭に比べ、直子は憧れの対象であった藤村から徹底的に傷つけられ、それを一生背負っていくことになってしまう。
余談ですがこの直子の役、オファーの段階では引き受けたがる女優さんが全くいなかったらしいですね。そりゃそうだ。あの役柄を引き受けて演じぬいた持田真樹さんは、台詞は下手だと言われているふしもありますがやはりすごいと個人的に思う。
直子をあそこまでひどい目に合わせる意味はどこにあったのかと、放送当時は賛否両論だった面もあるようですね。しかし個人的にはあの展開があったからこそ、繭と直子を一番近い「親友」として描くことに意味が出てきたと言えるのではないかと思うのです。
最終話まで丁寧に見ていけばわかりますが、ただでさえ二宮繭は生い立ちゆえに多くのものを抱えすぎている。だからこそ「優しい」羽村先生に惹かれたところもあるのかもしれません。
一方、彼女の親友として1話ではそれほど存在感のなかった直子ですが、少なくとも2話の展開がなければ、彼女は典型的な「普通の女の子」だったのではないかと思うのです。普通とちょっと違う点を無理に挙げるならば、せいぜい実家がスナックであるということくらいでしょうか。
特別荒れているわけでもすれているわけでもなく、ただ純粋に「恋愛」に憧れている少女。それが直子だった。でも2話の展開があり、生まれて初めて他人に決定的に裏切られることを知ってしまった。
こういう表現が正しいのかわかりませんが、言うなれば繭と直子は同じように傷を抱えて初めて「対等な存在」になり得たのではないかと思う。
もちろんこれは一般的な話ではなくて、あくまで一つの作品を描く上で、ということになりますが。現実世界では、脛に傷があるものどうしじゃないと絶対に分かり合えないなんてことはないはずですからね。傷を癒してくれる相手を探すぶんにはいいが、傷のなめ合いはちょっと違う。
ただ、このドラマを描く上では、そして繭と直子が作中にて本当の意味で「親友」となるためには、直子が藤村に襲われるという展開はやはり必要だったのではないかと個人的には思うのです。
対照的に描かれている羽村と藤村
繭と直子と同じく、まるで比較するかのように描かれている二人の教師がいます。
羽村先生と繭
まず一人目は、繭の想い人である羽村先生ですね。彼は典型的な「いい人」で、まあ母性本能をくすぐるタイプでもあるのでしょう。
余談ですが、片親のもとで育った女の子は「父親っぽい」男性に惹かれやすいなんて話を聞いたことがあるけれど、繭の場合はどうなんだろうか。
羽村先生に対する繭の態度は女子高生らしからぬ余裕にあふれていて、時には母性すら感じられるほどだと個人的には思うのだけど、彼女が羽村に求めていたものは具体的には何だったのでしょうか。彼女は決して羽村を「甘やかす」母親的存在になりたかったわけではないと思う。
しかし、だからといって彼に父性みたいなものを求めていたとも思えないんですよね。
まあ繭の父親にはいろいろと問題があるので、他の誰かにそのぶんの愛情を求めるのは決して不自然なことではないと思うのだけど。彼女の場合はあらゆる事情がありすぎてそう簡単には説明できないのが正直なところ。ここは2話以降も注目していきたい。
藤村先生と直子
羽村と対比するように描かれているのは、直子の想い人である藤村先生。「いい人」な羽村とはまったく違い、いい人の仮面を被った悪魔という表現がぴったりでしょう。
とにかく生徒からの人気が高い藤村ですが、大量に受け取った差し入れの弁当を薄笑いを浮かべながら火に投げ込む描写がとても印象的でした。直子を襲う展開は言うまでもないが、なんだかんだでこの行動が一番、彼という人間像を端的に示しているのではないかと思う。
差し出された好意をなんとも思っていない。いつでもぽいっと捨てることのできる残酷さ、残虐性があり、だからこそ直子を襲ったあとですら自責の念もなくいつも通り「いい人」を演じられる。
まあ彼自身も彼なりの闇を背負っていることは後々わかってくるわけですが、それにしてもこのサイコパスっぽい描写が見事だった。もちろん人として最低なのは言うまでもありませんが、あくまでドラマの登場人物としては「必要」なキャラクターだったと思うのです。
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