今回は、映画化もされているアメリカのベストセラー小説『トラベリングパンツ』の魅力について語ります。
『トラベリングパンツシリーズ』はどんな作品?
アメリカの作家アン・ブラッシェアーズのデビュー作。
2001年9月に出版され、たちまちベストセラーとなった。
ロングセラーとなった一作目の『トラベリングパンツ』はワーナーブラザーズで映画化され、2005年夏に全米で公開された。
また、世界19か国での翻訳が決まった。
『トラベリングパンツ』あらすじ
登場人物は4人の女の子、レーナ、ブリジット、カルメン、ティビー。
幼なじみで、人生の大半をともに過ごしてきた4人は、性格も容姿もバラバラ。それでも、ほんものの姉妹以上の強い絆と友情を誇っている。
そんな彼女たちがひょんなことから出逢った、一本のジーンズ。
どういうわけか、体型がまったく違う4人全員にぴったりで、さらに、4人ともにものすごくよく似合うのだ。
生まれて初めて4人が離れて過ごす夏。彼女たちはふしぎなジーンズを「トラベリングパンツ」(旅するパンツ)と名付け、互いに送り合ってはくことに決めたのだった。
面白さと人気の理由
読者がものがたりの世界にどれほど入り込めるか、どれほど共感できるかというのは、結局のところ、そのお話の主人公、もしくは主要人物らの性格や性質が読者のそれとどれだけ類似しているか、その一点につきるのではないかと私は思う。
もしこの仮説が正しいとすれば、今回ご紹介する『トラベリングパンツシリーズ』が出版後まもなくベストセラーの仲間入りをした理由にも、説明がつく。
単にストーリーが面白いというだけではない。
もっとも重要なポイントは、この小説のヒロインたる4人の女の子が、各々まったく違った魅力をそなえているということだ。
体育会系で突っ走るタイプ、かがやくブロンドの髪の持ち主ブリジット。
人にしばられるのを何より嫌う、やせっぽちで反抗的なティビー。
ギリシャ系のとびきりの美人で、でもどこか冷めているレーナ。
心配性でちょっぴりかんしゃく持ち、ラテン系のカルメン。
この通り、4人の女の子は性格も考え方も体型も三者三様に(四者四様?)、ぜんぜん違う。
この作品の人気の理由は、ここだ。読む人それぞれに、お気に入りのキャラクターがいる。自分に似た性格のキャラクターにはどうしたって思い入れが強くなるし、正反対のキャラクターには、ほのかな憧憬の念を抱く。
そして読み進めるうちに、気づくのだ。まったく正反対のように思える性格どうしだからこそ、逆に分かり合えることがある。理解しあえることがある。絆を強く感じあえる。相手がいちばん求めているものを、差し出し合えることがある。
女性だけでなく男性にも、ぜひともお読みいただきたい。
若く青い年代ゆえのかがやき、ひりひりする切なさ、そんなものがぎゅうぎゅうに詰まっている。こういう感覚は、いくつになっても忘れたくはないものだ。
~ひと夏め~
4人の親友は生まれて初めて、ひと夏じゅう別々の時間を過ごす。
それを唯一目撃するのが、例のふしぎなジーンズだ。
カルメンは、別居中の父親の再婚問題に心をかき乱される。
ブリジットは、サッカー・キャンプで出逢った素敵な男性エリックに恋に落ちる。しかしその恋情は、おさない頃の深い傷を呼び起こす。
レーナは、ギリシャのおばあちゃんの家で、好青年コストスに出会う。それまで出会った男の子は彼女の並外れた容姿しか見てくれなかったけれど、彼はどこか違う…?
ティビーは、アルバイト先のドラッグストアで、ベイリーという年下の女の子と知り合う。幼い頃からずっと重い病気と闘っている彼女は、ティビーに新しいものの見方を教えてくれる。
『トラベリングパンツ』感想
初めて読んだのは私がまだ小学生の頃だった。
表紙のデザインがなんともいえずお洒落で、the 海外小説!という感じで、だからてっきり中身もオシャレなもんなんだろうと決めてかかっていた。
でも、実際読んでみたら、想像とはぜんぜん違った。
悩まない人間はいない。苦しみのない人生なんてない。
髪の色、肌の色、生い立ち、環境、何を持っていようと持っていなかろうと、生きている限り、人は悩む。迷うし、立ち止まるし、間違える。他人を傷つけ、傷付けられる。
そういうことが、あくまで ”ティ―ンのオンナノコ目線” で、ごく自然に書かれている。だから、教訓じみたイヤな感じは全くしない。
翻訳もの、洋書はあんまりという方、それだけの理由で食わず嫌いなんて、ほんとうにもったいない。
若い女の子だけでなく、老若男女すべての方が楽しめる、共感できる内容だと思います。
トラベリングパンツシリーズは、全4作品。
あまりネタバレするのもどうかなと思うので、続く3つの夏についての詳細は控えます。
ただ、1作目を読めば、続く3作にも興味が湧くこと間違いなし!
ジーンズとの出会いから別れまで、その間、4人の親友にそれぞれ訪れる変化。人生の大きな分かれ目。
これは遠い外国に住む、華やかな女の子たちのお話ではありません。
今を生きている私たち全員の話なのです。
映画版キャスト
映像版もまた絶品です。
キャストは、
・カルメン: アメリカ・フェレーラ(斉藤貴美子)
・レーナ: アレクシス・ブレデル(坂本真綾)
・ティビー: アンバー・タンブリン(小島幸子)
・ブリジット: ブレイク・ライヴリー(小松由佳)
※()内は日本語吹き替えキャスト。
うわー、カルメンがレーナがティビーがブリジットが、い、いる!
生きて喋って、動いてる! という感じ。
小説を読んでいなくても、映像版だけで十分楽しめると思います。
それでは、今日はこのへんで。