疲れたときほど本を読みましょう

文学とエンタメが日々の癒し。 好きな作品の感想や日々のあれこれをマイペースに綴ります。

MENU

【映画】ヒッチコック『鳥』ネタバレ感想 鳥に襲われる理由がわからない不気味さ

ヒッチコック監督作品はわりと観てきたのですが『鳥』はなぜかみていなかった。

タイトル通り、鳥がとにかくわらわらと出てくるのがなんとなく気持ち悪くて嫌だったからかもしれません。…が、名作はやっぱり見ておくべきですね。映像美…と呼んでいいかわかりませんが迫力は本当にすごかったな。

 

今回は動物パニックムービーの金字塔とも呼ばれる『鳥』の感想をゆるく書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

『鳥』作品情報

』(とり、The Birds)は、1963年アメリカ合衆国の映画ジャンルは生物パニックもののサスペンスアルフレッド・ヒッチコック作品。原作はダフニ・デュ・モーリエによる同タイトルの短編小説。1970年代に量産された動物パニック映画の原点でもある。

Wikipediaより

 

1963年ということで結構古い映画ではありますが、映像を見ていると個人的にはそこまで古めかしい印象はなかったですね。『サイコ』と違って白黒でもなかったし。

 

 

なぜ鳥に襲われたのか?

主人公をはじめ町の子どもたちや漁夫たち、そして次第に町全体が鳥の大群に襲われはじめます。死人もばんばん出るし、女子供のみならず大人の男性でも太刀打ちできず。

が、なぜ鳥に襲われるようになってしまったのかという根本的な原因については、結局作中でも最後まで明確な解答はでてきません

 

何が始まり、何が起こっているのか、そして事態は最終的にどんなふうに収束していくのかというところもはっきり明らかになることは一切ない。だからこその不気味さというのが作中全体に暗~く漂っていて、うーんこれはもうこの手の作品が好きな人はたまらないんだろうなと思いながらも、個人的には、ミステリーとして観るならちょっと物足りないかなという気もしないではないような。

 

この手のパニック映画として有名な作品であれば、例えば『ミスト』が思い浮かびますが、『ミスト』においてもあのタコっぽい怪物たちの正体も結局はわからないままなんですよね。作中で襲われる人間たちも、また視聴者側にも、襲ってくる敵の正体は全くわからない。

 

…が、この『鳥』については、襲ってくるのは得体のしれない怪物でもなければ、サメでもゾンビでもない。日常で誰もが何気なく目にしている、見慣れた生物「鳥」が、人間に向かって敵意をむき出しに襲い掛かってくるわけです。

 

理由が分からない反面、やたらとリアリティがあるからゾワゾワとする。
これがおそらくは映画『鳥』の不気味さと気持ち悪さの一番の要因なのではないでしょうか。

 

「犯人」を特定したいという人間の深層心理と集団心理

鳥に襲われる理由は、結局は明らかにならないまま。ですが観ている私たちはもちろんのこと、渦中にある町の人たちも混乱の中で「原因」を探しつづけます。

 

災禍における「原因」が明確なものであれば、人々は一体化できたのかもしれません。「助け合う」という心理がそのまま力になり、団結することができる。しかし『鳥』においては原因など一切わからず、ただただ不気味な雰囲気が漂う町で息をひそめて生きていくしかない。

 

となると無理やりにでも「犯人」を仕立て上げようとするのが人間の性というもの。『鳥』作中でも例に漏れず、主人公のメラニーという女性が、この一連の騒ぎの「犯人」として糾弾される場面が出てきます。

 

何といってもメラニーは町の人たちからすれば「よそ者」なので、まあ分かりやすく「怪しい」ということになるのでしょうね。「あなたが怪しい」「何者なの」と正面切って詰められる場面の雰囲気は完全に中世の魔女狩りそのものでした。

まあさすがに火あぶりにされることはないものの、集団心理って怖いからね。あるいはメラニーの雰囲気や服装が都会的で小洒落て見えることへのやっかみもそこに含まれていたのかもしれませんが。

このくだりは『ミスト』のスーパーマーケット内で起こる騒動と完全に同じ流れでしたね。

 

 

 

作中に「音」がない

音がないと言い切ってしまうと語弊があるかもしれないが、正確には「効果音」がない。この効果は非常に大きいと言えるでしょう。

音楽がないからこそ、劇中でやたら際立つのは鳥たちの「羽ばたき」の音…
下手なSEが全くないぶん、”ドキュメンタリー”感がすごかった。

 

ヒッチコックはよくある音楽をこの映画では使わないことに決めた[16]。その代わり、計算された静寂の中に効果音とわずかなソース・ミュージックを使用した。彼は鳥の鳴き声や雑音を作り出すのに電子音響トラウトニウムの使用を希望していた。

Wikipediaより

 

上記の通り、ヒッチコックの「音」に対するこだわりはすさまじかったようですね。今思えば『サイコ』劇中の音も、他のスリラー映画とは違い、かなり独特だったような気がする。


逆に邦画であれば、いい感じのBGM盛りだくさんな作品も多いですよね。そこを否定したいわけではありませんが、音楽と映像が極端に「切り離された」作品の凄みはやっぱりすさまじいなと今回あらためて思ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日はこのへんで。