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岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』挿入歌 『アラベスク』は琉球方言 青葉市子のカバーがすばらしい

リリイシュシュは架空の歌手で、実際に歌っているSalyuさんがすばらしいのは言うまでもないことなのだけれど、でもこの『アラベスク』に関しては青葉市子さんのカバーverが非常に好きなのでリリイシュシュファンにはぜひとも聞いてもらいたいのです。

 

アラベスク』(リリイシュシュのアルバム『呼吸』収録)について

映画『リリイシュシュのすべて』のオリジナルサントラである『呼吸』収録曲についてはどれも甲乙つけがたいくらい好きなのだけど、『アラベスク』に関しては、初めて聴いたときからずっと「ちょっと爽やかすぎる」ような気がしてならなかった。


それは、劇中で爽やかとはほど遠い出来事が次々に起こるから…と言えばまあそれまでなのだけど、しかしどうしてもストーリー展開にそぐわない”おだやかな”波動がやけに強いような気がしていたので、満を持して歌詞を調べてみた。そもそも前提として歌詞をうまく聞き取れていなかったのだが、調べてみて、ああそうか…と納得した。


アラベスク』は、そもそも「琉球方言」で歌われていたのだ。

たしかに『リリイシュシュのすべて』劇中では夏休みの期間を長いこと沖縄で過ごすというシーンがあるし、その部分は、そのあとに始まる悪夢のような二学期と対比するように比較的おだやかに描かれているきらいがある。

 

個人的に『アラベスク』を聴くとなんとなく癒しに近い感覚を得ることができるのだけど、それはおそらく、沖縄弁特有のあのゆったりした大らかな空気感があってこそのものなのかもしれない。

でも同時に妙な不安感も感じてしまうのは、やっぱり言葉がよくわからないという端的な理由がまずは一つ。それから、こう言っちゃなんだけどやはりすでにストーリーの流れを知っているからこそ、というところも大きいのだろう。

 

夏休み期間というのは、つまり星野が本格的におかしくなる直前の時期のことで、ストーリー全体を考えると、まるで嵐の前のおだやかさ…みたいな雰囲気がある。

アラベスク』を後から聞くと、この奇妙なおだやかさが、まるでトラウマのフラッシュバックさながらにリアルに脳裏によみがえってしまう。

 

青葉市子さんのカバーする『アラベスク』は癒しそのものだった

リリイシュシュことSalyuの歌う『アラベスク』の魅力は、『リリイシュシュのすべて』という作品全体に流れる哀愁や不気味さ、みたいなものを声だけでそのまま表現しているところではないかと思う。

 

しかしながらシンガーソングライター青葉市子さんの『アラベスク』カバーは、本家とはまた全然違う魅力に満ちていて個人的にはとても好きなのだ。聴いていて、とにかく”癒し”そのものだなあ、と感じる。

青葉市子さんといえば、七尾旅人『サーカスナイト』のカバーもすごかった。つくづく本家の魅力を壊さずに違う方向性で上乗せしてくる歌い方ができる人だと思う。


『リリイシュシュのすべて』は音楽面に特化した映画というわけではないが、内容とはうらはらの穏やかな空気感がそこここに強く感じられるのはやはり、魅力ある音楽要素があらゆるシーンにちりばめられているからというのも大きいのかもしれない。

 

 

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